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【コラム】どうすれば健康長寿になれるか?

医療コラム

当院は、住民の皆さまの健康長寿をお手伝いするクリニックです。

まずは、どうすれば健康長寿になれるかをお話しします。

そもそも介護が必要となった原因は、

 

1.認知症

2.脳血管疾患

3.高齢による衰弱(筋肉減弱症)

4.骨折・転倒(骨粗鬆症)

5.関節疾患

6.心疾患

7.呼吸器疾患

8.悪性新生物

9.糖尿病

10パーキンソン病

 

以上の順であることがわかっています。

そのため介護が必要でない健康な状態を保つには、1.認知症・脳血管疾患の予防、2.整形外科疾患の予防の2つが大切であるということがわかります。当院は脳神経内科、脳神経外科、整形外科、リハビリテーション科を専門にした理由がここにあります。

 

  • 認知症・脳血管疾患の予防のために

認知症の危険因子は、聴力障害1.9、うつ1.9、外傷性脳損傷1.8、低教育歴1.6、喫煙1.6、社会的孤立1.6、肥満(BMI≧30)1.6、高血圧1.6、糖尿病1.5、身体不活動1.4、アルコール過剰摂取1.2、大気汚染1.1であることが明らかとなっています(数字はリスク比)。また日本での研究では、上記に加えて、やせ(BMI<18.5)が危険因子であることも明らかにされました。

認知症の予防をするためには、これら認知症の危険因子の治療や対策が必要となります。例えば、聴力障害に対して補聴器を使用すること、高血圧や糖尿病に対する治療、禁煙などは認知症の予防に寄与すると考えられます。しかし、これらは日本では概ね行われているとも考えられます。

そこで当院では、まず外傷性脳損傷、特に脳震盪に注目しました。外傷性脳震盪は、重度のものと軽度のものがあり、重度であれば病院に受診し治療を受けていますが、軽度=「脳震盪」については、適切な医療が行われていない場合があると考えています。そこで、脳震盪を専門にしている東邦大学医療センター大橋病院脳神経外科の中山晴雄医師の監修のもと、「スポーツ頭部外傷外来」を開設し、脳震盪の診断、治療、リハビリテーションが受けられる体制を整備しました。

また当院では、うつ、低教育歴、社会的孤立、身体不活動、やせにも注目しました。これらは認知症の発症の以前に、フレイルを引き起こしやすい原因としてしられていたものです。そのため、「フレイル外来」という専門外来を開設し、フレイル対策を行うことで認知症の予防を図っていくことにしました。

そして長年の臨床経験から、認知症の発症の前に、フレイルの状態となっている人が多いだけでなく、歩行機能などの運動機能の低下が引き起こされていることに気づきました。行ってみれば、認知症になる前に、多くの方がロコモティブ症候群を発症しているということです。当院は「整形外科外来」を開設し、ロコモティブ症候群の治療やリハビリテーションができる体制も整備しました。

認知症とともに要介護の原因となる疾患に脳血管疾患があります。脳血管疾患は主には、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血があります。

脳出血は主に高血圧によってもたらされます。現在日本では高血圧の方はほとんど治療を受けており、脳出血は減ってきています。一方脳梗塞は、脳動脈硬化、および心房細動が原因となります。脳動脈硬化は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が原因といわれています。健康診断でこれらの項目に異常がある場合は、当院の場合は「家庭医外来」を受診してもらい、生活習慣病に対する総合的な薬物療法や生活指導を受けて頂きたいと考えています。

くも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂が原因で引き起こされます。脳動脈瘤は健康な方の2-6%に存在していることが知られており、破裂する前に治療することがくも膜下出血の予防になります。当院の「脳ドック」を定期的に受けて頂き、脳動脈瘤の有無をチェックすることが大切です。「脳ドック」は動脈瘤だけでなく、脳動脈硬化、無症候性脳梗塞、無症候性脳出血も評価できますので、脳血管疾患の予防には重要な手段になります。

 

  • 整形外科疾患の予防のために

加齢に伴い骨が弱くなった状態を骨粗鬆症といいます。骨粗鬆症になると、骨折しやすくなり、脊椎の圧迫骨折が起こると、背骨が徐々に曲がってきます。若い時よりも背が低くなったとか、前傾姿勢になったとしたら、それは脊椎の圧迫骨折が原因です。

加齢に伴い関節は変形した状態を変形性関節症といいます。膝関節が変形すると変形性膝関節症、股関節が変形すると変形性股関節症といい、それぞれ膝関節痛、股関節痛、歩行障害の原因となってきます。脊椎の関節が変形すると変形性脊椎症といわれ、首痛や腰痛の原因になります。さらに脊椎の後ろには脊髄があり、変形により末梢神経が圧迫されると神経痛やしびれの原因に、脊髄そのものが圧迫されると(脊柱管狭窄症)、四肢の麻痺による歩行障害や膀胱直腸障害の原因となりやっかいです。

これらの加齢に伴って引き起こされる整形外科疾患を予防するためには、まずは検診です。レントゲンを撮影するだけでわかることはあるのですが、レントゲンだけでわからない場合にはMRI検査や骨密度検査を追加します。どういう人が整形外科の健診を受けた方が良いかについては、ロコチェックが参考になります。表1のような症状が一つでもある方は、ぜひご来院ください。整形外科外来の予約がとれない場合には、まず「フレイル外来」に受診して頂き、検査の上必要があれば整形外科外来へ紹介するという形もとらせて頂きます。

もし予兆が確認されたら、骨粗鬆症の場合には薬物療法が行われ、変形性関節症の場合にはリハビリテーションにて関節周囲の筋肉を鍛えたり、肥満が原因となっている場合には減量したりということが行われます。検診の結果に応じて、当院で治療を受けることができます。

 

表1.ロコチェック

片脚立ちで靴下がはけない

家の中でつまずいたりすべったりする

階段を上がるのに手すりが必要である

家のやや重い仕事が困難である
(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)

2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
(1リットルの牛乳パック2個程度)

15分くらい続けて歩くことができない

横断歩道を青信号で渡りきれない