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【コラム】フレイル外来について

医療コラム

当院のフレイル外来が対象としているのは、

フレイル

サルコペニア

ロコモ:ロコモティブシンドローム

ふらつき・転倒

です。

 

フレイルについて

フレイルというのは、要介護状態の前段階であり、介入によって健康の状態に改善できる可能性ある状態として、日本老年医学会が提唱した概念です。

表1に、フレイルの症候を示します。それぞれ日本における基準も定められています。3項目以上、基準値にひっかかると、5年以内に半分が要介護状態になることが明らかになっています。

外来では、なぜフレイルになったのかについて、安易に歳のせいとせずに、医学的に分析していきます。医学的な診断に基づいて治療方針を決めることが大切であり、なんとなく栄養、なんとなく運動、なんとなく社会参加では、効果がないばかりか、逆効果になる場合すらあります。ですので、これら5項目にあたる方は、ぜひ当院の「フレイル外来」に受診し、しっかり原因を調べさせて頂きたいと考えています。

同時に当院は、食事栄養指導、リハビリテーション、心理療法などが同時に受けられる体制を整備しておりますので、治療についても相談にのることができます。

 

表1.フレイルの症候

  • 体重減少
  • 筋力低下
  • 疲労感
  • 歩行速度の低下
  • 身体活動量の低下

 

2.サルコペニアについて

どんな方も加齢に伴い筋肉量、筋力は低下していき、サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)になります。しかし、例えば脳の加齢変化であるアルツハイマー型認知症は脳神経内科にかかるでしょうし、骨の加齢変化である骨粗鬆症は整形外科にかかりますが、筋肉の加齢変化であるサルコペニアは、どこの科にかかれば良いのでしょうか。医学的にあまり注目されてこなかった結果このような問題が生じているわけですが、近年、筋肉量減少や筋力低下は要介護どころか死亡率にも大きく関係することがわかってきたため、急速にその重要性が注目されています。

当院では、リハビリテーション科でこの問題に取り組んでいきます。まずは、筋肉量、筋力の測定が大切です。サルコペニアを疑う症状を表2に示しますので、これらの症状のある方はぜひ受診してください。治療については、筋肉量減少タイプと筋力低下タイプに分けて、筋肉量減少タイプはまず栄養療法、筋力低下タイプではまず運動療法という考え方があります。

 

表2.サルコペニアを疑う症状

  • 4~5 kgくらいのものを持ち上げたり運んだりするのが難しくなったと感じる
  • 部屋の中を歩くことが難しくなったと感じる
  • ベッドや椅子から立ち上がることが難しくなったと感じる
  • 10段くらいの階段をのぼることが難しくなったと感じる
  • 過去1年間に転倒した

 

3.ロコモ:ロコモティブシンドロームについて

整形外科疾患によって、立つ、歩くという移動能力の低下をきたした状態をロコモティブシンドローム(以下ロコモ)といいます。加齢に伴う整形外科疾患は50歳代くらいからかなりの頻度でみられ、認知症やフレイルに先行します。具体的には、変形性膝関節症、変形性腰椎症、骨粗鬆症の3疾患が代表であり、まずはレントゲン検査で関節や骨の状態を評価するところからはじめます。

ロコモを疑う症状を表3に示しますので、これらの症状がある方はぜひ外来に受診してください。また、ロコモかどうか自分でできる方法として、40㎝の高さの椅子から、片脚でふらつかずに立ち上がれるかというものがあります。

 

表3.ロコモを疑う症状

  • 片脚立ちで靴下がはけない
  • 家の中でつまずいたりすべったりする
  • 階段を上がるのに手すりが必要である
  • 家のやや重い仕事が困難である
    (掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)
  • 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
    (1リットルの牛乳パック2個程度)
  • 15分くらい続けて歩くことができない
  • 横断歩道を青信号で渡りきれない

 

4.ふらつき・転倒について

ふらつきや転倒も高齢者に多い状態だと思います。これも容易に歳のせいにされがちです。65歳以上の20~30%、80歳以上では過半数にめまいやふらつきを認めると報告されているものの、今まで、脳画像検査や心電図で異常がなければ、歳のせいとか気のせい程度の対応がなされてきました。

まず、いろいろな疾患や薬物がふらつきや転倒の原因になります。ふらつきや転倒の結果、頭部打撲による脳障害や骨折が引き起こされますので、原因を調べておくことは重要であり、原因によってはすっかり良くなってしまう場合もあります。

最近、「加齢性前庭障害」という概念もでてきました。前庭とは、耳の奥の三半規管のことを指しており、三半規管に病気が起こるとめまいが生じます。問題は、三半規管も加齢変化があることであり、その場合はふらつき、あるいは浮動性のめまい感を生じます。前庭は姿勢の調整に重要な役割を果たしており、前庭機能の加齢変化で転倒しやすくなります。まだ知見は少ないですが、前庭機能の低下に対しては、バランス訓練といった前庭リハビリテーションが有効である可能性があります。