歩行速度低下外来
歩行速度は、加齢とともに低下する傾向があります。青信号の間に横断歩道を渡りきる速度を1秒間に1メートルとすると、70代後半からこの速さで歩くのが難しくなることがわかっています。歩行速度が低下すると、日常生活動作(ADL;activitiesofdailyliving)の自立度が低下しやすくなることがわかっています。通常歩行速度は、握力、片足立ち、最大歩行速度、通常歩行速度の4項目の中で、6年後の日常生活動作の自立度の低下を最もよく反映すると報告されています。
歩行速度が低下すると、寿命が短くなることもわかってきました。34,485名の高齢者を対象とした調査において、6年から21年の追跡期間中に17,528人が死亡し、歩行速度は、男女すべての年齢層において生存率と相関がありました。これらの研究結果を受けて、75歳以上の方の区健診(世田谷区では「長寿健診」)の問診票において、「以前と比べて、歩く速度が遅くなってきたと思いますか」という項目が作られました。この質問に対して、ハイと答えた方は、ぜひ当院の歩行速度低下外来を受診してください。
まず客観的に歩行速度が低下しているかを調べます。歩行速度低下の原因疾患は以下のようになります。どのような原因で歩行速度が低下したかを調べ、病状に応じてリハビリテーションや薬物療法を受けて頂きます。歩行速度の低下には個人差が大きいこともわかっており、リハビリテーションなどの介入により改善が見込まれる部分があります。高齢になっても、できるだけ社会に参加するために運動機能を維持していきましょう。
【歩行速度低下をきたす疾患】
・脳神経疾患
神経変性疾患(パーキンソン病など)、脳血管疾患、神経免疫疾患、末梢神経疾患、脳腫瘍、慢性硬膜下血種、水頭症
・骨関節疾患
脊椎症、骨粗鬆症、関節症、関節炎、足病
・筋疾患
サルコペニア、筋炎、筋ジストロフィー
・内科疾患
心不全、呼吸不全、慢性腎臓病、糖尿病、甲状腺疾患