健康長寿 Preventive Medicine

健康長寿とは何か?

日本は世界有数の長寿国です。2019年の日本人の平均寿命は男性で81.4歳、女性で87.5歳です。長生きなのは良いことですが、できれば元気で長生きがより良いですね。最近、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことを「健康寿命」と定義されました。2019年の日本人の健康寿命は、男性72.7歳、女性75.4歳とされています。となると、男性で8.7年、女性12.1年にわたり、いわゆる介護が必要な状態があるということになります。健康長寿とは、できるだけ介護が必要になることなく長生きすることを意味しています。

介護が必要になった主な原因は?

1位が認知症、2位が脳血管疾患、3位が高齢による衰弱(サルコペニア・フレイル)、4位が骨折・転倒(骨粗鬆症)、5位が関節疾患ということがわかっており、これら1位から5位までで7割以上を占めています。いわゆる生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙)からくる脳血管疾患ばかりでなく、ロコモ(関節疾患、骨粗鬆症)やフレイルが大切ということになります。わかりやすく言ってしまうと、脳神経内科の疾患、整形外科の疾患がほとんどです。

まずは幸福長寿

健康長寿を目指せといいますが、長生きすることは悪いことではありません。長生きすれば当然さまざまな臓器に老化徴候がでてくるわけで、脳・脊髄・末梢神経、筋肉、骨、関節も例外ではありません。

確かに老化は治りません。しかし、歳をとっても幸せに生活を送ることはできるはずです。医療によって、治癒はできないものであっても、生活の質を高めるためのお手伝いができると思います。

まず当院に受診して頂き、正確な診断のもと治療やリハビリテーションを受けて頂きたいと考えます。脳神経内科、脳神経外科・脊椎脊髄外科、整形外科の専門医が、たとえ老化徴候であっても、その対処法についてご相談させて頂きます。

認知症のご相談は当院へ

特に当院は、認知症の診療、「物忘れ外来」に力を入れてきました。理事長の山口潔は老年精神科専門医として、院長の橋本昌也は脳神経内科専門医として、長年認知症診療に取り組んできました。より高度な認知症診療を行いたいという想いからふくろうクリニック自由が丘を開設したと言っても過言ではありません。

認知症も多くは神経変性疾患といって治癒が困難な疾患です。だからといって私達は治療をあきらめません。なぜならば、治癒が期待できない疾患であっても、できるだけ生活の質を高めて頂き、幸福に暮らして頂くことを望むからです。世田谷区では、「認知症とともに生きる希望条例」(令和2年10月施行)というものがありますが、私達は、たとえ認知症になっても、希望を持ち続けながら生活して頂ける方法を長年探ってまいりました。

認知症との共生と予防。このテーマについて、いままでも、これからも、患者さんやそのご家族、そして市民とともに明らかにしていきたいと考えています。

どうすれば健康長寿になれるのか?

生活習慣病対策に加えて、「脳・脊髄」「筋肉」「関節」「骨」の健康をいかに保つか、老化をいかに遅らせるかということが大変重要です。

しかし、これらは従来の健康診断では重要視されてきませんでした。従来の健康診断は、生活習慣病対策に重きが置かれてきたのです。その結果、脳血管疾患や冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)は減りました。しかし、未だに「脳・脊髄」「筋肉」「関節」「骨」を評価する公的な健康診断はありません。

そこで、自由が丘では、整形外科外来、脊椎脊髄外来(脳神経外科)、ロコモ・フレイル外来(老年内科)を開設し、皆様の健康長寿を強力にバックアップしていきます。

ロコモとは、日本整形外科学会が、骨・関節・筋肉・神経などの運動器の健康維持を啓発するために作った概念、用語です。健康長寿にはロコモ予防が大切です。https://locomo-joa.jp/

ロコモは、40~50歳代から始まります。検査方法としては、40㎝の高さの椅子からふらつかずに片脚立ちができるかという「立ち上がりテスト」があります。立ち上がりテストでふらついた場合には「ロコモ度1」となります。また、ロコモと判定される方の中には、「腰痛」「肩こり」「膝痛」をお持ちの方が多くいらっしゃいますので、これらの症状をお持ちの方も、ぜひ整形外科外来、脊椎脊髄外来(脳神経外科)、ロコモ・フレイル外来(老年内科)を受診してください。

ロコモの治療は、薬物療法、リハビリテーション、手術に分けられます。私達は、運動療法を始めとするリハビリテーションを強みとして、治療してまいります。健康長寿を目指すにあたり、最も効果的なのは運動・スポーツです。もちろん、骨粗鬆症と診断されれば、薬物療法も提案します。社会的処方や社会参加の支援にも力を入れています。

当院では、首、腰、膝、肩のMRIドックを行っていますので、併せてご利用ください。

更年期障害も健康長寿対策のきっかけに?

女性ホルモンや男性ホルモンが低下しても、物忘れや疲れやすさが出てきます。しかも、腰痛、肩こり、膝痛など、いわゆるロコモも出てきます。つまり、更年期障害や、男性のLOH症候群により、ロコモ・フレイル・認知症に関連した症候が出現します。これらの症状を改善するためには、ホルモン補充療法が勧められる場合もありますが、私どもは、運動・スポーツ・リハビリテーションによる身体機能の維持・改善が大切だと考えています。

さまざまな脳の変調と脳ドックは当院へ

当院では、「物忘れ外来」「パーキンソン外来」「脳卒中後遺症外来」「高次脳機能外来」「スポーツ頭部外傷・脳振盪外来」「大人の発達障害外来」「がんメンタル外来」など、さまざまな視点から脳疾患の診療に力を入れています。MRI、心理検査、リハビリテーションが院内で完結することを強みとしています。

また、介護が必要となる主な原因の一つに脳血管疾患があります。くも膜下出血の脳動脈瘤は、MRIによる脳ドックを受けることによってのみ早期発見、早期治療ができます。ぜひ症状のない方でも、脳動脈瘤のチェックのために脳ドックを受けて頂きたいと考えます。

認知症予防とニューフィットネスについて、こちらをご覧ください。

軽度認知障害の専門外来を開設

軽度認知障害MCI : Mild cognitive impairmentは、日常生活に支障を来すレベルには達しないものの、記憶障害や遂行機能障害など何らかの認知障害がある状態を指します。かねてより認知症の前段階として注目されてはいましたが、いわゆる年齢相応とは区別がつきにくく、また明確な治療方法も存在しなかったため、実際に医療機関に受診する方はほとんどいませんでした。

しかし、この度、アルツハイマー病による「軽度認知障害」及び軽度の認知症の進行抑制の効能又は効果をもつレケンビ注®(一般名:レカネマブ)の登場により、軽度認知障害の段階からアルツハイマー病かどうか(アミロイドβ蛋白の蓄積があるかどうか)を調べ、アルツハイマー病の所見が認められたら、治療薬を投与するという選択肢を私たちは得ることができました。

当院では、経験豊富な臨床心理士・公認心理師が、軽微な認知機能障害を明らかにする神経心理学的検査を行います。また、3テスラMRIにより、微小出血や白質病変を含めたやはり軽度な脳病変を明らかにすることが可能です。この地域では数少ない軽度認知障害を診断できる施設となっています。

ぜひ、以前と比べて記憶力が落ちた、意欲が落ちた、性格が変わったとお感じになる方、また下記に示したリストに心当たりがある方がいらっしゃったら、お気軽にご相談ください。

初期認知症徴候観察リスト(OLD: Observation List for early signs of Dementia )

 

  1. いつも日にちを忘れている(今日の日付がわからないなど)
  2. 少し前のことをしばしば忘れる
  3. 最近聞いた話を繰り返すことができない
  4. 同じことを言うことがしばしばある
  5. いつも同じ話を繰り返す
  6. 特定の単語や言葉がでてこないことがしばしばある
  7. 話の脈絡をすぐに失う(話があちこちに飛ぶなど)
  8. 質問を理解していないことが答えからわかる (質問に対する答えが的外れで、かみあわないなど)
  9. 会話を理解することがかなり困難
  10. 時間の観念がない (時間がわからないなど、午前・午後の区別がつかないなど)
  11. 話のつじつまを合わせようとする
  12. 家族に依存する様子がある(本人に質問すると家族の方を向くなど)

結果: 12 項目中、4 項目以上が該当した場合、認知症の疑いあり

ロコモ・フレイルの専門外来を開設

「フレイル」とは、心身のさまざまな機能が加齢によって低下、食欲や活動量も低下して虚弱になっていき、放っておくと介護が必要になる状態です。
フレイル簡易チェックリストで1つでも気になることがある方は、受診をお勧めしています。

フレイル簡易チェックリスト

  • 6ヵ月で2~3kgの体重減少はありましたか?
  • 以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか?
  • 5分前のことが思いだせますか?
  • (ここ2週間)訳もなく疲れたような感じがしますか?
  • ウォーキングなどの運動を週に1回以上していますか?

 
詳細な内容は、以下のリンクよりご参照ください。

ロコモ・フレイルはこちら

クリニック併設の通所リハビリ施設

お一人お一人の健康長寿をサポートします

介護保険を利用しての、短時間通所リハビリテーション(1時間程度)を実施しています。
理学療法士、作業療法士が、参加者さんの心身機能、認知機能、生活機能の維持・向上を目的としたリハビリテーションを
担当いたします。

詳細な内容は、以下のリンクよりご参照ください。

通所リハビリテーションはこちら

通所リハビリテーションのご案内(チラシ)はこちら

脳ドック

MRI(断層撮影診断)を使用し、の疾患や萎縮の発症を未然に防ぐための検査です。 主に、血管の破裂リスクとなる「動脈瘤」、血のかたまりで血管がつまる「梗塞」、そして「脳腫瘍」や「萎縮(早期アルツハイマー型認知症)」などの自覚症状のない異常箇所を調べます。

詳細な内容は、以下のリンクよりご参照ください。

脳ドックはこちら

社会的処方と社会参加の支援

健康の社会的決定要因

近年、社会疫学の進歩により、健康の社会的決定要因(SDH:Social Determinants of Health)が明らかとなってきました。これまで世界中で行われてきた多くの疫学研究により、貧困や孤立は、喫煙や食生活、身体活動の少ない生活などの従来から知られていた健康リスク以上の健康への関与が示されています。貧困や孤立の問題を抱えている人は病気になりやすく、通常の医療へのアクセスが困難となる場合もありますので、健康長寿の阻害要因として私たちは注目しています。

社会的処方

社会的処方は、健康の社会的決定要因をふまえた診療の方法として提唱された診療活動のモデルです。高血圧症と診断された患者に対して降圧薬を処方するように、貧困や孤立の問題を抱えている患者に対して、経済的支援や社会とのつながりを「処方」するといったイメージです。

社会的処方は、社会的な課題への対応にむけて医師や保健医療の専門職が福祉職や地域コミュニティのNPO等へと、社会的な課題があると思われる人々を紹介する取り組みです。具体的な手順を表1に示します。

社会的処方における紹介先には、個人や集団で行う趣味やスポーツなど(音楽、美術、劇作、読書、ダンス、運動、ガーデニングなど)、ランチグループ、自助グループ、ボランティア活動、成人教育、職業訓練、支援つき就労、助言・カウンセリング、行政や関係機関(住居、法律、成年後見、雇用、教育、お金など)といったものが考えられます。

表1.社会的処方の手順

手順1:対象者の社会・経済的課題を発見する 社会的処方の起点は、外来に来た患者や健診・健診の受診者の社会生活状況をアセスメントすること、心身の健康だけでなく社会的にも健康に過ごせ、望む未来を自由に描き、落ち着いた生活を送ることができているか、そのために必要な社会資源(つながりやお金)が十分かを評価する。
手順2:地域社会につなげる 医療従事者から患者を引き受けたつなぎ役:リンクワーカーは、その人との面接を行い、本格的に全人的なアセスメントをしつつ、信頼関係を構築する。地域の社会資源や福祉事務所等の公的な支援を利用するか否かを本人が主体的に判断するために寄り添い、必要に応じてそれらに橋渡しをする。
手順3:生活に伴走する 慢性疾患であれば、かかりつけ医や医療機関は、疾病の管理を支援しつつ、社会的課題についても外来等の場での問診や会話の中で確認していく。リンクワーカーやリンクワーカー事務所は、橋渡しをした先で患者が良い状態で生活できているかを確認しつつ、長期的にフォローアップしていく。

おやまち暮らしの保健室

おやまち暮らしの保健室は、病院に行くほどではないけれど、暮らしの中で悩みについて相談できたり、多様なまちの人々と交流ができたりする、誰もが日常的に気軽に立ち寄ることができるまちの保健室です。

東急大井町線尾山台駅を下車し、ハッピーロード尾山台(商店街で夕方は歩行者天国になる)に面した「タタタハウス」というコミュニティスペースをお借りしてやっています。特に、水曜日午後には、看護師が常駐し、立ち寄った方に対応しています。それ以外にも、認知症カフェ、子育てパパママ会、外国とつながる親子サロンなどが行われており、医療、高齢者、介護・ケア、子育て、外国人と、多様な分野の方々が関わっています。孤独・孤立を感じる方の交流・参加の場や、医療機関の社会的処方の拠点となれるよう成長中です。