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「MRIはどのように役に立つか」

医療コラム

当院は、家庭医として、予防医療にも力を入れています。生活習慣病検診やフレイル検診、予防接種、運動・スポーツの支援に加えて、特にMRIを活用した疾患予防にもお役に立ちたいと考えています。

 

MRIが最も役に立つのは脳ドックです。

 

脳卒中は、片麻痺や失語症などの後遺症を生じさせ、生活機能に大きく影響します。脳卒中は、大きく脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に分けられます。

くも膜下出血は、脳動脈が分岐するところに生じた瘤(こぶ)である脳動脈瘤が破れることで発症します。くも膜下出血の発症を予防するためには、出血する前に脳動脈瘤を発見し、治療する必要があります。脳動脈瘤が生じやすい人は、喫煙、大量飲酒(1週間に150g以上のアルコール)、高血圧、家族歴(血縁者にクモ膜下出血を起こした人がいる)です。

脳梗塞は、脳動脈が動脈硬化症で狭くなり、血栓によって閉塞することで生じます。脳動脈の動脈硬化症が生じやすい人は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満、メタボリック症候群です。血栓は、心臓の不整脈(心房細動)でも生じるため、心電図検査も有用です。

MRIを使った脳ドックで、脳卒中の発症前に、①脳動脈瘤はないか?②脳動脈硬化はないか?③小さな脳出血の跡はないかを調べることは、脳卒中の予防に役立ちます。特に前述のような危険因子をお持ちの方は、ぜひ脳ドックを受けて頂きたいと考えます。

その他、脳の疾患の画像診断においては、MRIは欠かせない検査装置となっています。今まで病院でしかできなかった検査が、当院でも可能となっていますので、ぜひご利用いただきたいと考えます。

 

MRIは脳だけでなく、整形外科でも威力を発揮します。

整形外科ではまずレントゲンを撮影します。もちろん整形系外科医は、診察所見とレントゲン写真でかなりの診断を行っているわけですが、レントゲンは骨しか写らないわけで、靱帯・椎間板・筋肉・神経・血管などは写っていません。そのため、腰が痛い、首が痛い、膝が痛い、肩がいたいという時、まずレントゲンをとり、「骨には異常はないですね」と鎮痛薬だけ処方されたという経験をされた方は多いと伺います。

当院でMRIを撮影され、はじめて椎間板ヘルニアの診断がついたとか、靱帯損傷の診断がついたという方が多くいらっしゃいます。もちろん闇雲にMRIを撮影すれば良いというものではありませんが、従来の診察だけでは痛みの原因がはっきりしなかったという場合に、当院でMRIを撮影し原因の診断がつくのであれば、MRIを撮影して良かったと思います。

 

MRIはがん検診にも役立つ場合があります。

がんの有無を調べる際には、一般的にまずCT検査を行うことが多いと思われます。特に肺のように空気が多い臓器ではCTでないとがんの有無は調べられません。また、消化管(食道・胃・大腸)や口腔・咽頭・喉頭・気管支などの管腔臓器は、CT検査でもがんをみつけることは出来ず、内視鏡で直接粘膜を観察する必要があります。

一方、肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓、前立腺、子宮・卵巣といった臓器は、CTよりもMRIの方が、病気の診断をつけやすい、がんを見つけやすいと言えます。

自治体が行っているがん検診でも、胃がん:胃の内視鏡検査、大腸がん:便潜血検査、肺がん:胸部レントゲン検査はよく行われます。しかし、肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓、前立腺、子宮・卵巣のがん検診というのは、おろそかになりがちです。もし、これらのがんが心配という場合は、自治体が行っている検診に加えて、当院でMRIを撮影すると安心です。ただし、子宮がんについては、MRIよりも子宮頸部・子宮体部の細胞診が最も効果的であることがわかっていますので、婦人科での内診による検査が難しいという方に勧められます。また乳がん検診としてMRIが話題となる場合がありますが、造影剤を使ったMRI撮影を行わなければならず、当院では対応できません。乳腺クリニックでのマンモグラフィーや超音波検査が勧められますのでご紹介します。胃がんについては、内視鏡検査は行っていませんが、ABC検診という血液検査でできるものは当院でも対応していますのでご相談ください。

もちろん、がん検診以外でも、血液検査で肝臓・胆道系・膵臓・腎臓の異常が疑われている方、男性で排尿障害が気になる方、女性で不正出血などが気になる方の精密検査としてもMRIを利用できますので、ご相談ください。