当院におけるアルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体療法のお知らせ
当院におけるアルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体療法のお知らせ
医療法人社団創福会理事長 山口 潔
この度、アルツハイマー病に対する日本初の疾患修飾薬「レケンビ点滴静注®200㎎、500㎎」(一般名:レカネマブ)が、「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」の効能又は効果で製造販売承認を取得しました。今年度中に発売開始も予定されています。
レケンビ®点滴静注は、アルツハイマー病の代表的な病理であるアミロイドβに結合し、脳脊髄液中への排出を介して減少させ、その結果、アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制が期待されます。2週間に1回、1回1時間程度での点滴となります。
注意点としては、
- アルツハイマー病のうち軽度認知障害や軽度の認知症のみ有効であり、中等度以上に進行したアルツハイマー型認知症では無効であるということ。
- 現在「アルツハイマー型認知症」と診断されている方の中には「アルツハイマー病」以外の疾患が含まれており、「アルツハイマー病」と診断するためには必ずアミロイドPET検査あるいは髄液検査を新たに受けてもらい診断を確定する必要があること。
- 治療中に、17%に脳出血、13%に脳浮腫と高頻度に副作用を認めるため、頻回に頭部MRI検査を行い、詳細に経過を観察する必要があること。
- 費用が高いこと。欧米承認薬では1年間で薬価が385万円と言われており、本邦で保険適応となったとは言え、自己負担額もそれなりとなる予定であること。
などがあります。
当院でも、レケンビ®点滴静注の投与が可能となるよう準備しております。2週間に1回、1回1時間の点滴となります。また、投与開始2か月、3か月、6カ月においては、特に症状変化がなくとも頭部MRIを撮影する予定です。まずは軽度認知障害や認知症かどうかの診断を当院で確定します。専門医の診察、頭部MRI検査、神経心理学的検査、血液検査など、認知症・軽度認知障害診療に必要な体制は当院に十分ございます。次にアルツハイマー病かどうかについて、アミロイドPET検査可能施設にご紹介し、検査結果により投与するかどうかを決定します。
投与中に症状変化があった場合はまず当院にご相談頂き、緊急で頭部MRI検査を撮影し評価します。連携病院に入院をお勧めすることもあるかもしれませんが、臨床試験では副作用により入院が必要となることはまれであったとされています。
「アルツハイマー型認知症」と診断されていたが、アミロイドPET検査の結果により「アルツハイマー病」ではなかったという方に関しても、従来からの薬物療法(認知症治療薬、向精神薬)や非薬物療法(リハビリテーション・心理療法・栄養療法)について、継続して診療させて頂きます。
軽度認知障害と診断される方の中にアルツハイマー病が含まれることになり、レケンビ®点滴静注の治療対象となるわけです。もの忘れ、注意・集中力低下、性格変化など軽微な異常をお感じになった方も、まずは軽度認知障害に相当する病状かどうかを確認させて頂きますので、お気軽に当院にご相談ください。