変化による不安やストレス

高齢になると、身体機能の低下や身近な人の死別など、様々な変化が起こります。こうした変化によって、以下のような不安やストレスを抱えがちになります。

将来への不安

健康状態の悪化や経済的な不安、家族や友人との別れなど、将来への不確実性が高まることで、不安や心配が募りやすくなります。特に、これまでの人生設計や目標を立てていた方は、それらが叶わなくなる可能性に直面し、強い不安を感じることがあります。

孤独感

かつてはにぎやかだった家庭や職場から離れ、人との関わりが減ってしまうことで、孤独感を抱える高齢者は少なくありません。特に、配偶者や親しい友人を亡くしたり、子どもや孫が遠方に住んでいたりする場合、孤独感は深刻化しやすくなります。孤独感は、意欲や生きがいを失わせ、心身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。

無力感

身体機能の低下や病気によって、今まで当たり前にできていたことができなくなったり、生活の制限を受けたりすることで、無力感を感じることがあります。特に、自分自身で何もできなくなったと感じたり、周りの人に頼らざるを得ない状況になったりする際に、強い無力感にさいなまれることがあります。

自分自身の価値の喪失

社会から引退したり、体力や気力が衰えたりすることで、これまでの人生で培ってきた経験や能力が活かせないと感じたり、社会に貢献している実感を持てなくなったりすることで、自分自身の価値を見失ってしまうことがあります。特に、仕事や家庭で重要な役割を担ってきた方は、その役割を終えたことで、自分の存在意義を見失い、自信や生きがいを失ってしまう可能性があります。

これらの感情を一人で抱え込んでしまうと、抑うつ状態や不安障害などの精神的な問題につながる可能性があります。

がんと診断されたことによる不安

がんと診断された方は、精神的なショック・将来への不安・落ち込みや無気力感を経験することが多いです。初期段階の混乱期を経て、今度は怒りなどの否定的な感情が強くなり、不安や落ち込みが深まることがあります。治療中やその後も不安は続き、眠れない・食欲がないといった症状があらわれることも少なくありません。

がんと診断されたことによるこれらのストレス反応は、自然なものであり、治療への適応過程で次第に和らぐことが一般的です。しかし、日常生活に支障が出るほどの状態の場合は、心理カウンセリングなどのサポートが必要です。

そのまま時間の経過を待っていると、認知症や適応障害などの深刻な心の問題があらわれることもあります。認知症は、記憶障害・判断力の低下などを引き起こし、日常生活への影響が顕著にあらわれます。適応障害では、ストレスに対する過剰な反応として、不安・抑うつ・社会的な孤立などが見られます。これらの症状は、治療の妨げになるだけでなく、生活の質を著しく低下させる可能性もあるため、早期の診断と適切な治療が重要です。適切なケアと支援を受けることで、がん患者様が直面する心の負担を軽減できます。

訪問診療とは？

高齢化社会において、医療と介護のニーズが高まる中、自宅で療養生活を送る高齢者が増えています。高齢者の場合、通院が困難なケースも少なくありません。このような状況において、自宅で医療サービスを提供するのが「訪問診療」です。訪問診療は、患者様の自宅に医師が定期的に訪問し、診察・治療・薬の処方・療養上の相談などを行う医療サービスです。高齢者をはじめ、通院が困難な方を対象として、ご自宅での療養生活を医学的に支え、生活の質の維持・向上を目指します。訪問診療をご利用いただくことで、高齢者は住み慣れた環境で安心して療養生活を送れます。

どのようなメリットがある？

高齢者の場合、身体的な症状と心の問題は密接に関係しており、分けて考えることはできません。例えば、体調不良が続くことで気分が落ち込んだり、不安感が強くなったりすることがあります。

心身を同時にケアできる

身体面だけでなく、心のケアも同時に行うことで、より効果的に症状の改善や生活の質の向上を図ることができます。また、訪問診療では、医師が患者様の自宅環境や生活の様子を直接見ることができるため、個々の状況に合わせたケアプランを立てやすくなるというメリットもあります。

自宅で安心して治療を受けられる

慣れ親しんだ自宅で治療を受けることができるため、患者様はリラックスして治療に専念できます。また、自宅での治療は、病院への移動や待ち時間といった負担を軽減できるため、体力的な負担が少なく高齢者の方にとってメリットとなります。

ご家族の負担軽減

訪問診療と心理カウンセリングを組み合わせることで、ご家族の介護負担を軽減することも期待できます。訪問診療では、医師が定期的に自宅へ訪問し、健康状態をチェックしたり、必要な治療や処方を行います。これにより、病院への付き添いや服薬の確認といった負担を軽減できるだけでなく、専門的な知識を持った医師から、介護に関するアドバイスを受けることも可能です。さらに、心理カウンセリングでは、高齢者の心の状態を把握し、適切なサポートを提供することで、ご家族の精神的な負担の軽減も期待できます。

このように、訪問診療と心理カウンセリングを連携させることで、ご本人とそのご家族にとって多くのメリットがあります。